分子美食学。
料理を科学的観点から解析かつ分析してこれまで経験や勘で伝承されていた調理法の暗黙知を形式知化させる研究は、今や世界各国で行われているけど、職人の世界の最たる分野である鮨。いや、この場合は鮓。
鮓ふじながの大将が作るお寿司は、とてもロジカル。「美味しさ」がしっかり化学されていると感じたのだ。
この記事の目次
元は西麻布のすし通出身の鮓ふじなが
初めてすし通に伺ったのは何年前だろう。
あれは僕の誕生日で、ご馳走してもらった記憶がある。当時はまだここまで色々なレストランを食べ歩いていなかったけど、初めて藤永氏のお寿司を食べて感動したのは覚えてる。
熟成されたマグロの美味しさを初めて知ったのもこのお店だった。
もう一度行こうと思いながらも中々伺うことができず、気がつけば数年が経ち、藤永氏は独立して鮓ふじながを麻布十番にオープン。行きたいと思ったけどまさかの会員制で中々行く機会がなくて気がつけばそこからさらに数年。
そんなおり、うっかり誘って頂いたので嬉しかったのはいうまでもない。満を辞しての初訪問だ。
一斉スタートのお任せコース
鮓ふじながは一斉スタートのお任せコースのみの提供となっている。
結構時間厳守な感じなので、予約が取れたり誘ってもらった場合は定刻の5分前にはお店に着くようにしたほうが良さそうな感じ。
「この日も10分前集合ね。」と、主催者に念を押された。
先ずは呑兵衛4点セットで乾杯
テーブルにつくと既に先付け的な小鉢がセットされていてどれも美味しそう。
ズワイガニ、塩辛、刃物南蛮漬け、自家製のからすみの呑兵衛4点セットにガリ。
ハイボールで軽めに喉を潤しながら摘むんだけど、もちろんどれもとっても美味だし、手がかかっているのがよくわかるのだ。
挨拶がわりの大トロ
そして一貫目でいきなりスペシャリテの大トロのすきみが出てくるのがすし通と同じスタイル。
筋は丁寧にピンセットで取り、無数に入れられた隠し包丁がとても丁寧な仕事をしているのがわかる一品。
マグロは熟成されていて旨味も十分。ねっとりと口のなでとろけて一気に旨味が口の中で優しく広がっていって美しい余韻が残るのは素晴らしいの一言。
このマグロで一気にふじながワールドに誘われるのだ。
色々入ってる濃厚茶碗蒸し
序盤で登場の茶碗蒸し。
牡蠣とかホタテとかボタン海老の頭とかノドグロとかとにかく色々な具材の出汁を抽出して作られたのがこちら。
なにせ濃厚。
茶碗蒸しって出汁を味わう料理だと思っていたんだけど、鮓ふじながの茶碗蒸しはもはやスープと言ってもいいくらい。
ノドグロの昆布締め
ノドグロをまさかの3日間も昆布締めしたという一品。
クリスピー感が感じられる塩と、ノドグロのジューシーな旨味のコントラストがしっかり味わえる。
イワシ
筋目にしたイワシは骨を抜いて臭みを無くして。
さっぱりとしたイワシの旨味がしっかり感じられる味わい。
縞鯵と金目鯛のなめろう
アジの印象が強いなめろうだけど、そもそも「なめろう」とは調理方法のこと。
千葉県にずっといただけあって馴染み深いなめろうだけど、2種類の魚を合わせたなめろうはそもそも初めてかも。
フードプロセッサーで滑らかに調和されたなめろうは日本酒のアテにちょうど良いお味わいで、ちびちびと永遠に食べれるやつだね。
トロと雲丹と白イカ
目の前で調理している時から、「ん?それものせるの?」ってなったのがこちら。
シャリの上に海苔、白イカ、トロ、そしてたっぷりの雲丹。
見た目にもすごいんだけど、これがなぜか口の中で不思議と一体感を醸し出す。
美味しいけど、この組み合わせで何故もこう食べやすく一体感があるのかは不思議な一品だ。
天草の車海老
天草と言えば数々の魚介類で有名だけど、やっぱり車海老が有名。
60グラムの車海老を28秒だけ火を通すことでやや生な感じが残るため、僕みたいな生海老アレルギーは遠慮したほうがいいかもしれない。
いや、食べたけど(笑)
シャリと車海老の間には粒子化した海苔が使われていて、口の中に入れた後に海苔の風味が車海老の風味とともに綺麗に口の中に広がる。
海鮮焼売
去年の12月に仕込んだせいこ蟹の内子と外子を使ったという焼売。
ノドグロ、ハマグリの出汁、キャビアの塩っけで頂くのだけど、これが絶妙に美味。
寿司屋が作る海鮮焼売は焼売専門店よりも美味しかったかもしれない。
この焼売を売り出したら爆売れしそうな美味しさだけど、お値段はかなりお高めかも(笑)
アナゴのタレを絡めたトロたく
これだけ贅沢な食材を使っているにもかかわらず、「海苔の風味を味ってください」とのこと。
確かにこれは海苔が主役だ。さくぱり。凄い旨味。
わざとシャリやネタは少なめにして海苔が多めに感じたのはこのためなのか・・・味わって欲しい味をしっかりと表現している一品だ。
キスの天ぷら
キスの天ぷら。上には白子?それもトラフグの白子だ。
このトラフグの白子をソースがわりにして頂くのだけど、中々に美味。
最近の冷凍技術は本当にすごいよなーとも思わされる贅沢な逸品。
毛蟹のおはぎ
これもすし通時代にも食べたことがある気がする毛蟹のおはぎだ。
蟹味噌のことを考慮すると、蟹で一番美味しいのは毛蟹のような気がする。(異論は認める)
そんなことを改めて感じられる一貫。
マグロの漬け
続いてマグロの赤身を漬けで。こちらは2分だけつける。
うん。やっぱり美味しい。
終盤に来て王道のネタを持ってくる感じもすごいいい感じ。
鰻
焼き方は関西風。つまり、腹開きして、蒸さないで焼いた鰻だ。
そして肉厚。皮がパリッと。いや、バリッとしていて皮の美味しさがしっかり感じられる一品。これ、個人的にはとっても好き。
お椀
出汁の旨味がしっかり。
〆にぴったりだ。
最後の雲丹
こちらもすし通時代のスペシャリテだった雲丹。いや、すし通時代には海苔はなかったかな。
海苔巻きにするのでなく、シャリと雲丹の間に海苔を挟むことで海苔の風味が雲丹の味わいの邪魔をしないように工夫された一品。
これ、いい感じで雲丹の旨味が口の中に広がって、しっかり海苔の風味も感じられるのが面白い。
鮓ふじなが
西麻布すし通で腕を奮っていた大将が2017年に独立して麻布十番で開業。
試行錯誤を繰り返し、何度も何度も最適解を見つけ出したのが想像できるような鮓の数々。
そして、最新の化学もしっかりと駆使して職人の技術が数値化されていたりするところも実に面白いのが鮓ふじながだ。
大将の藤永氏は魚を作るという意味で「鮓」という字を使っている。
そして、印象的だったのは「昔は技術を追求していたけど今は心を追求している」という藤永氏の言葉。
定期的にこのお店に通いたいなと思った中々のパンチラインだ。
鮓 ふじなが
03-6435-3522
東京都港区麻布十番2-9-5
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130702/13209440/
年間1000食以上外食するグルメブロガー。
得意分野は肉と寿司。ミシュランから千ベロまで。
株式会社BNF 代表取締役
株式会社門崎(格之進)執行役員
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